四.地始凍

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 彼女が肩で息をしてることをいいことに閏たちは呑気な会話をする。  素人目に見てもわかる。春海たちと比べてこの子はまだ幼い。踏んだ場数も断然に違うだろう。  続けてノーモンがなにかを投げた。  頭サイズの水の塊が彼女にぶち当たりびしょ濡れだ。その水はノーモンの手から生み出されているのだ。まるで手にバケツでも持っているかのようだ。  ノーモンは振りかぶりもせず、ただ手を上下に振る。それだけで水の塊が彼女に向かっていく。  ピーピーキーキー鳴く黄鬼と緑鬼と紫鬼を、彼女が護るように抱えてノーモンの水を避ける。  この子……。  すっかり濡れ鼠のような姿になってしまった彼女がキッと顔をあげる。  瞳が紅蓮の焔のように染まる。 「火焔旋風(ジャーマ・トルベジーノ)っ!!」  彼女が手を天に向かって伸ばすと、周囲の空気が燃えるかのようにして生まれた炎が渦巻いて昇る。 「おい、もうやめとけって」 「黙れっ!」 「セツ、下がれ!」  閏がオレたちの前に風の壁をつくった。  さらにその周りにノーモンが雨のように水を降らせていく。  焔を帯びた巻く風と水を含んだ壁の風はどちらが強いだろう。  オレの前で大人しく見ているだけだった春海が、しゃがんで地面に手を置こうとする。     
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