9人が本棚に入れています
本棚に追加
「みんな待ってくれ。君も、もういいだろ」
春海が手を止めて、オレを見上げる。
この勝敗は着けたくない。その気持ちがわかったのか、彼は仕方ないなというような表情をして立ち上がる。
水を含んだ風の壁の向こうにいる少女に向かって叫ぶ。
「このまま続ければどちらにも被害が出る。それは君も望ましくないだろ?」
彼女は不愉快そうに顔を歪めた。炎風のおかげか濡れた髪は乾きつつある。
「兄貴面するんじゃないわよ! あたしは半分人間の奴が兄だなんて、考えたくもない!!」
なんか複雑だがやめてやるものか。
「君一人じゃオレたちには敵わないよ。レキって奴はそれを分かってて君をよこしたのか?」
チビ鬼たちなど完全に戦力外だ。主人が護るようでは、こちらとは大違い。
「ここに来たのはあたしの意思よ! パパはあんたのことしか考えてない。あんたを殺したくて殺したくて堪らないのよ! あたしのことなんか全く頭にないわ……」
そこはかとなく淋しくていじけている感じがする。
「君は、父親に恨まれたいってわけ?」
「存在を無視されるよりはいいわ」
そんなものなのか? 立場を交換したいくらいだな。
最初のコメントを投稿しよう!