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生まれた時に一人の命を犠牲にし、生きていく中でも幾つかの命を奪ってきた。そんな価値がオレにあるとでもいうのか?
「セツ!!」
春海は泣きそうだ。
「オレだったら、彼女が死んで、どれほど悲しくても! どれだけ辛くても! その子どもの命を奪うなんて考えもしない!! 苦しくても、どんなに苦しくあっても、オレはしない! 命で命を償うことなんて出来ない!」
心の底からの叫びをあげる。
「ごめん、春海。ありがと」
「君は、彼女が大切だったもののひとつだ」
「うん」
ごめん。春海が必死になって護ろうとしているもの、オレはあまり理解していないんだ。
大切なものを奪い去った元凶がそこにあったとしたら、きっと恨まずにいられない。
「あんたはオレの父親みたいなもんだよな」
「え、なにそれ」
ぽかんと口を開く。さっきまでのテンションと全然違う。
「だってそうだろ? オレをここまで育てて来たのはお前なんだから」
「ななななにそれなにそれなにそれ! そ、それだけは勘弁してくれ! アニキ分ならまだしも、ア、愛してくれるのはともかくとして、セツに父親だなんて思われたくねぇ」
真っ赤になって声を裏返しながら、頭を横に振ったり、どうどうと両手で制したりした後、頭を抱える。
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