四.地始凍

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 生まれた時に一人の命を犠牲にし、生きていく中でも幾つかの命を奪ってきた。そんな価値がオレにあるとでもいうのか? 「セツ!!」  春海は泣きそうだ。 「オレだったら、彼女が死んで、どれほど悲しくても! どれだけ辛くても! その子どもの命を奪うなんて考えもしない!! 苦しくても、どんなに苦しくあっても、オレはしない! 命で命を償うことなんて出来ない!」  心の底からの叫びをあげる。 「ごめん、春海。ありがと」 「君は、彼女が大切だったもののひとつだ」 「うん」  ごめん。春海が必死になって護ろうとしているもの、オレはあまり理解していないんだ。  大切なものを奪い去った元凶がそこにあったとしたら、きっと恨まずにいられない。 「あんたはオレの父親みたいなもんだよな」 「え、なにそれ」  ぽかんと口を開く。さっきまでのテンションと全然違う。 「だってそうだろ? オレをここまで育てて来たのはお前なんだから」 「ななななにそれなにそれなにそれ! そ、それだけは勘弁してくれ! アニキ分ならまだしも、ア、愛してくれるのはともかくとして、セツに父親だなんて思われたくねぇ」  真っ赤になって声を裏返しながら、頭を横に振ったり、どうどうと両手で制したりした後、頭を抱える。     
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