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五.天気上勝地気下降
学校帰りに、主婦に混じって夕方のタイムセールに買い物してから帰る高校生は幾らか目立つ。
パートのおばちゃんに顔を覚えられ今日の夕飯を当てられたり、店の前のベンチに座って半日を過ごすお話好きのおばあちゃんの話に付き合いみかんを頂いたり、スーパーの隣のカフェでバイトしてるおねえさんに手を振られたり、どれもこれも人当たりのいい春海が広げた人脈だ。
最近春海くん一緒にいないのね、と掛けられた声に、漸くの子離れです、と真面目な顔で返す。
今でも彼は着いてきたがるが、親離れするためだと断っている。すると春海は毎回、親じゃねぇと叫び、ショックを受けてついて来ない。
スーパーの袋を手に河原沿いの道を歩いていると、向こう岸でなにかが光った。
目を凝らすと、刀のようなものを持った奴がいるではないか。
やべぇ通り魔か、と思って足を止め遠目から様子を伺う。
顔はよく見えないが、黒の外套に黒の袴に黒のブーツと黒づくめだ。周囲に人はいない。
川の方に向かって勢いよく振り下ろした刀がキラリと光を発した。
「え?」
激しく水飛沫があがる。
バチャバチャと川の中でなにかが暴れている。魚にしては大きい。
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