五.天気上勝地気下降

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 水中の何かを切ったのか。何かってなんだ。  もしかして妖?  水面がしんと静まる。  やったのか?  その黒づくめは刀を納める。腰に紅いベルトが見えた。  その次の瞬間、水が飛沫をあげた。 「危ねぇ!!」 「!」  思わず叫んでいた。  川の中から灰色の何かが、刀を納める隙をついて、その黒づくめに襲いかかる。  が、すんでのところで黒づくめは振り返り、攻撃を鞘で受け止めた。灰色のものの姿が目に捉えられる。やけに身体が細長い。  ぐぐぐと押す方と留める方の力勝負。五分五分、いや勢いと隙をついた灰色の長いなにかのがやや弱い。  やがて黒づくめがその鞘を振り上げ、灰色の何かを川原に弾き飛ばす。  ばちばちとウミヘビのようなものが陸で跳ねる。  黒づくめが近付いて、それをムギュっと踏むと、灰色のウミヘビは動かなくなった。  いつの間にか目の前で繰り広げられる闘いに夢中になっていて、終わったと思った瞬間力が抜けた。ふぅと息をはいたところで、黒づくめと目が合う。  あれ、ヤバい?  自分も半分妖だったことを思い出し身構えようとかと思ったが、彼はこちらを軽く睨みつけただけで去って行った。  咎められなかったことにホッとする。  次の日、保健室でそれを思い出した。     
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