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水中の何かを切ったのか。何かってなんだ。
もしかして妖?
水面がしんと静まる。
やったのか?
その黒づくめは刀を納める。腰に紅いベルトが見えた。
その次の瞬間、水が飛沫をあげた。
「危ねぇ!!」
「!」
思わず叫んでいた。
川の中から灰色の何かが、刀を納める隙をついて、その黒づくめに襲いかかる。
が、すんでのところで黒づくめは振り返り、攻撃を鞘で受け止めた。灰色のものの姿が目に捉えられる。やけに身体が細長い。
ぐぐぐと押す方と留める方の力勝負。五分五分、いや勢いと隙をついた灰色の長いなにかのがやや弱い。
やがて黒づくめがその鞘を振り上げ、灰色の何かを川原に弾き飛ばす。
ばちばちとウミヘビのようなものが陸で跳ねる。
黒づくめが近付いて、それをムギュっと踏むと、灰色のウミヘビは動かなくなった。
いつの間にか目の前で繰り広げられる闘いに夢中になっていて、終わったと思った瞬間力が抜けた。ふぅと息をはいたところで、黒づくめと目が合う。
あれ、ヤバい?
自分も半分妖だったことを思い出し身構えようとかと思ったが、彼はこちらを軽く睨みつけただけで去って行った。
咎められなかったことにホッとする。
次の日、保健室でそれを思い出した。
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