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なるほど杉山のビビりは兎も角として、見えないはずのものが見えているという1Eのそいつが昨日の黒づくめに違いない。
春海のあの様子だと会っても平気そうかな。
放課後、1Eの教室を覗いてみる。
ホームルームは今終わったばかりのようで、ほぼ全員教室にいる。廊下の窓側に寄り掛かり、教室から出てくる奴をひとりひとり見て行けば見つかるだろう。
1Eに知り合いがいないので、みんな特にオレを意識しないで帰っていく。
殆どの生徒が教室を出て行ったが、それっぽい奴いないなぁと思って、もう一度教室を覗こうとすると。
パッとドアに人が現れた。
「あんた、鬼だろ」
「え!?」
葡萄色の瞳が真っ直ぐオレを見る。
昨夕睨まれたのもこの瞳にだったかもしれない。
なんでわかったんだ。モンスターハンターにはわかるのか。
「害のない妖は放っておくのが流儀だが、うちは桃太郎の家系らしいんだ。桃太郎って言ったら、お供連れて鬼退治だろ?」
桃太郎って桃から生まれたという奴だよな。っていうか、実話だったのかあれ。鬼が実在するとわかった今、御伽噺もノンフィクションになっていく。
「オレを退治する、ってこと?」
「生まれながらの設定ってやつには逆らえないからな」
「設定って……」
漫画やゲームのキャラクタじゃないんだから。
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