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「ちょっ、なんでなんで。つか、セツまで犬扱いー?」
気が削がれた春海から、桃太郎の子孫に向き直る。
「オレには戦う気はないよ。つか覚醒したばっかで戦い方なんて知らないし、春海の力を借りる気もない」
春海が肩を竦める仕草をする。呆れただろうか。
「それに、例えオレが鬼だから、生まれながらに人を襲って暴れ狂う設定だとしても、そんな馬鹿な真似はしないと逆える強い意思がある」
「それはどうかな。正気を失ってたら意思なんて働かない。お前もそういう覚えはあるんだろう?」
そうだ。はじめて鬼の姿になった時、春海がやられた後の記憶がはっきりしない。何時の間にか変貌していて、春海の声によって呼び覚まされた。自分なのに自分ではないような感覚。
あのままだったら自分はなにをしていたかと考えると少し寒気がする。
「それはある。だけど、次は無いよ。自分がそうなるんだって知ったから。前とは違う」
「それは確証がない話だな」
言えてる。自分でもその確証は持てない。
「疑わしきは罰せず、実に嫌いな言葉だよ」
そう言って彼はフッと笑う。
やっぱりちょっと変な世界観っていわれるのわかる気がする。
「まぁいいだろう」
「え、いいの? あっさり引き下がるな」
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