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そんなために教えてもらってるわけじゃない。仮にも師匠は『害無き妖には無用』と宣言する祓師なんだし。
春海を見遣ると何やらニヤついている。
「なにニヤニヤしてんだよ」
「いや、な。暦も祓い屋だったんだよ」
「え?」
暦って、オレの母親の名前だよな。
「敵情視察に来て、妖の生きてる姿をみて、その世界に染まっちまったけど」
「……」
「堕ちた祓い屋なんて言われてたよ」
こうやって母親の話をされてもいまいちピンとこないのは昔からだった。
堕ちた祓い屋と呼ばれた人、一体どんな人だったんだろう。
堕ちたと言われてしまうのだから、妖と祓師はやはり相反するものなんだろう。
「……いいのか?」
「いいもなにも。オレ、セツが鬼の姿に変幻した時、嬉しい反面、なにか違った気がしたんだ」
「なにかって?」
「たぶん、立派な妖怪になって欲しかったんじゃなかったからなんだ。立派な半妖になって欲しかったんだよ、オレは」
「なんだそれ」
立派なミックスってどういうことだよ。思わず笑う。
「どっち着かずじゃなくてさ、どっちの気持ちにもなれるようにいてほしいなって」
それが、人間でもあり、妖でもある自分だから、こそ出来ることかもしれない。
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