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六.水泉動
水仕事はお任せをと、お風呂掃除をしてくれていたノーモンが蒼い顔をして、みんなが寛いでいた居間に飛び込んで来た。ゴキでも出たのかという勢いだ。
「強い気がすごい勢いで迫ってきてます!」
その言葉に春海が宙を仰ぐ。気配を辿っているのだろうか。
「これは……」
「あたし応援を呼んで来るよ!」
閏が廊下に飛び出すとともにパッと消えた。
玄関のチャイムが鳴る。
「はーい」
「セツ! 迂闊に出るな」
「うえ? まさか妖がピンポンしたのか?」
「恐らく」
春海もノーモンも二人して神妙な顔つきで頷く。
もう一度チャイムが鳴る。
「取り敢えず出るよ。無理矢理窓破られたりしたら嫌だし」
ドアフォンを取る。
モニターに門の前の映像が映し出される。あきらかに人ではない者の姿。
「我らはレキ様の直属の部下。その命、我らに渡されよ」
訪問者がホントに妖だったとは。
「……それは無理」
素直に答えた。命ください、言われて、はいどうぞ、なんて答える奴があるか。
ドアフォンをそのままに、春海を伺いみる。
「わざわざ玄関からお出でになるとは律儀な奴らだな」
春海は呆れ顔で困ったようにこめかみをかいた。
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