六.水泉動

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「セツ、塀と自分の命。どっち?」 「それは……」  そことそこ比べるか?  二人で睨み合いしてると、ノーモンが叫ぶ。 「誰か戦ってるみたいです!」 「え?」 「もう応援が来たのか?」  やけに早すぎる。  モニターにチラッと映った人物に見覚えがある。黒いストレートの髪に黒いジャケット。  あれは……。 「丙!」 「おい! セツ!」  思わず外に飛び出していた。  崩れたブロック塀と二人の妖の先にいる人物に叫ぶ。 「丙、なにしてんだよ!」  私服姿の丙は初めて見る。その手には刀身のない刀。  突然現れた丙に注視していた妖が振り返りオレを捉える。  丙が刀を横に払うと、妖の崩した塀が粉砕し、それが妖の視界を砂煙で遮った。  妖が砂煙に巻かれてる隙に丙の元に駆け出す。 「なんでここに!」 「昨日河川敷でセツが忘れていった物、届けに来た」  その手にはタオルとB5判のノート。河川敷での特訓中に使い、そのまま放置してきてしまったようだ。 「うわマジ、ごめん!」  パンッと音がする勢いをもって両手を合わせる。  オレたちにとっては戦力が増えて助かったが、彼は人間だ。妖の争いに巻き込みたくない。 「いや、いい時機だったようだな」     
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