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「セツ、塀と自分の命。どっち?」
「それは……」
そことそこ比べるか?
二人で睨み合いしてると、ノーモンが叫ぶ。
「誰か戦ってるみたいです!」
「え?」
「もう応援が来たのか?」
やけに早すぎる。
モニターにチラッと映った人物に見覚えがある。黒いストレートの髪に黒いジャケット。
あれは……。
「丙!」
「おい! セツ!」
思わず外に飛び出していた。
崩れたブロック塀と二人の妖の先にいる人物に叫ぶ。
「丙、なにしてんだよ!」
私服姿の丙は初めて見る。その手には刀身のない刀。
突然現れた丙に注視していた妖が振り返りオレを捉える。
丙が刀を横に払うと、妖の崩した塀が粉砕し、それが妖の視界を砂煙で遮った。
妖が砂煙に巻かれてる隙に丙の元に駆け出す。
「なんでここに!」
「昨日河川敷でセツが忘れていった物、届けに来た」
その手にはタオルとB5判のノート。河川敷での特訓中に使い、そのまま放置してきてしまったようだ。
「うわマジ、ごめん!」
パンッと音がする勢いをもって両手を合わせる。
オレたちにとっては戦力が増えて助かったが、彼は人間だ。妖の争いに巻き込みたくない。
「いや、いい時機だったようだな」
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