六.水泉動

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 春海がそう答えると、丙がオレを背に庇うように刀を持った右手を横に広げる。 「セツはこっちだ」 「は? セツはオレが護んだよ!」  春海が噛み付くように文句を言い出す。  なにか戦いとは無関係な揉め事が始まってる気がする。 「な、なに揉めてんの? なにを揉めてんの! って、うわっ!?!」  二人の仲裁に入ろうかと思ったとこに、グレゴリオが黒い羽でか跳躍でかはわからないが高く飛んだ。思わずただ目で追うように見上げると、オレに向かってなにかを投げつけてきた。 「「セツ!」」  凄い力に身体を後ろに持っていかれて倒れ込む。後頭部だけはぶつけないように首に力を入れた。  やられたのか? どこが痛い?  反射で瞑っていた目を開ける。  黒い槍のようなものが腰の少し横で、服だけを貫いて地面に刺さってる。 「へ、平気平気。あっぶね」  もう少しのとこで腹を貫いていただろう。ラッキーなことにケツと背中に青タンを作ったかもしれないだけで済んだ。 「うわーよかったー」  春海が胸を撫で下ろしている前で、グレゴリオが着地して舌打ちする。 「内輪揉めはあとだ! オレが赤髪」 「オレはあごひげ!」 「「セツは二人(オレら)で!!」」  おいおい、思い掛けない感じでいいコンビ誕生か。     
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