六.水泉動

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 春海が金色の狼に変わる。人型でないそのバージョンもあるのか。はからずとも美しいと思ってしまう。  たーん、と地面を後ろ足で蹴って、一瞬でユリウスに飛び掛かる。ユリウスは黒いナイフのようなものを春海に投げつけた。  春海は空中で方向を変えて一度お隣さん家の塀の上に着地する。続け様にナイフを投げられるが余裕気に避けている。  黒いナイフのようなものは無尽蔵にユリウスの両手から出てきているようだ。  春海が避けて斜め向かいの家の塀に突き刺さったはずのナイフがフッと消える。丙の武器のような具現化させた妖気なのかもしれない。  スピードのある春海には無意味と、投げナイフは諦めたのか、ユリウスは両手にハンティングナイフを持って春海に襲い掛かる。春海も人型に変わり爪でそれを受け止めると、火花が散る。  グレゴリオの方も黒い槍のようなものを持って刀の丙と対している。  オレの服に穴を開けている槍は消えておらず、なんだか触ると危なそうなので服を破ってなんとか態勢を立て直す。 「セツ、そこから動くなよ」 「わ、わかってる」  無力の今、この一対一の状況を壊しても得はない。  互いの刃を刃で弾き合い、距離を取る。 「人間、邪魔をするな!」  グレゴリオが槍を回すと、黒い靄が渦を巻き始める。 「セツ! この靄は吸ってはいけない」     
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