六.水泉動

8/12
前へ
/243ページ
次へ
 丙が右で刀を構えながら、左手の袖で口と鼻を覆って言う。  毒なのか!?  靄が広がりはじめているので、急いで自分も袖で覆う。 「わ、わはった」  閏が居れば風で巻き上げ天高く持っていけただろうが、今のメンバーでは風は巧く使えない。  そういえばノーモンは、と思った矢先、ポツンと頭に水が落ちた。  そして一気に雨が降り出す。 「恵みの雨?」  みるみるうちに黒い靄が雨に取り込まれて無くなっていく。  これはまさか、ノーモンが降らせてるのか? 「その黒い水たまりには触れないでくださいっ」  玄関先にいたノーモンが叫ぶ。道路には黒い靄が取り込まれた雨溜まりが出来ていた。  グレゴリオが凄い勢いでノーモンを振り返る。 「邪魔をするなぁ!!」  黒い槍をノーモンに向かって投げる。  ノーモンが倒れて見えなくなる。 「ノーモン!!」  心臓がグッと締め付けられる感じがした。  グレゴリオがノーモンに向いた隙に、丙が眼帯の死角、右側の背後から斬りにかかっている。  斬撃は避けられたが、やはり死角なのか翼を多少掠めたようで、彼はよろめいた。  ここからでは倒れてしまったノーモンを見ることは出来ない。動くなと言われたが、今の隙をついてノーモンの元に行けないものだろうか。     
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加