六.水泉動

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 ユリウスの鼻を掠め、空に弧を描いてから地面に光の刃が突き刺さる。  丙が舌打ちする。  地面が不安定になれば飛ぶと読んだ丙が、刀の刀身を飛ばしたのだ。  コンビ結成したばかりで見事なコンビネーションだ。 「おい! 翼痛めた方狙えよ!」  関心するこちらをよそに、春海が丙に向かって文句を言う。 「動きはそっちのあごひげのが遅いだろ」 「どっちにしろお前のが遅いから意味ねぇな」 「こっちの地面も揺らされたからな」  いや、だから、仲間割れはよせよ……。  その時、ざわりと総毛立つような感覚に襲われる。  それを感じたのは自分だけでなく、丙も全感覚を研ぎ澄まし警戒している。 「なんだ? 新手か?」 「いや、閏だ!」  他に仲間を連れて戻ってきたのだ。誕生日の日に感じたのと同じような幾つかの気配。  流石に彼らも平然とはしていられず、あごひげが赤髪隻眼の元に飛ぶ。 「分が悪い。退くぞ、グレゴリオ」 「クソ!」  グレゴリオに恨めしそうに睨みつけられる。  ユリウスの手の先になにかが生まれ、そこに二人が入ったと思ったら目の前から消え去った。  一瞬、なんだか懐かしいにおいがした。  間も無くして閏がどこからともなくジャンプしてきたように現れて、地面に着地する。 「間に合ったみたいね」 「遅かったな」     
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