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当然だろう。一年に一度の誕生日どころではない、一生に一度のことが自分の身に起こったんだ。頭から角が生えてきたっていうのに、呑気にご馳走が食えるか。
「オレは、人間じゃないのか?」
先程現れた爪やら牙は、何事もなかったかのように元の姿を取り戻している。角も生えていない。
唐揚げを摘まみ出したので睨みつけると、春海は黙秘を諦めた。
「いや、人間だよ。半分はね」
「半分?」
「セツの母さんは写真で見たことがあるだろう? 少し妖力が強かったが、普通の人間だった。ただ、恋に落ちた相手が妖だったのさ」
母親はオレが生まれた時に死んだと聞かされていた。十まで祖父母に育てられ、その祖父母も事故でなくした。
親戚も居らず、天涯孤独の身となったオレを拾ったのは春海の祖父だった。
祖父と二人暮らしの春海とは物心つく前から遊んでいたから、すぐにその暮らしに馴染めた。
高校入学を機に、一人暮らしをはじめるつもりだったが、春海も同じ高校だった為、春海の祖父が持つ別宅の一軒家にシェアさせてもらうに至ったわけだ。
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