六.水泉動

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 不満気な丙に、閏に手当てしてもらっているノーモンが申し訳無さそうに返す。 「基本こっちの世界に居ると目立ってしまう方々なので……」  確かに外見が人間離れしている。  ガタイが半端なかったり、足が馬のようだったり、皮膚が鱗だったり、長く太い尻尾があったり……。  ご近所さんに見られたらオレはおしまいだよ。 「四天王と互角に戦っていたとは、こちらの世界にいる割になかなか強くなったなぁ、春海」 「おい、あいつは人間じゃないか。祓師? お近付きになっておいた方がよいか?」 「ねぇねぇセツくんを紹介してよ、ねぇねぇ」 「もう茨木童子とか四天王の他の熊童子たちが来てもおかしくないな」  ユリウスとグレゴリオは父を想って向かってきていたようだ。  今いる彼らのようにオレを護ろうとする者たちがいるように、父を護ろうとしている者たちもいるということだ。  争い事にはどちらの言い分もあるものだ。  それでも取り敢えずみな無事だったことにホッとしていた。普段生きることに執着している意識はなかったが、やはり命を狙われているとなるとヒヤヒヤする。  この時、春海が妙なことを考えているなんて気付きもしなかった。 「このまま攻められて護られるだけじゃダメかもしれない。こっちも打って出よう……」
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