9人が本棚に入れています
本棚に追加
七.草木萠動
「セツ」
廊下を歩いていたら、丙に呼び止められた。
「今週土曜、祓いの仕事が入ったんだが、一緒に来てみるか?」
「え、いいの?」
丙に本格的に祓うところを見てみたいとお願いしていた。この間の河川敷では遠目でこっそりだったり、自分の命が狙われている状況だったりで、まともに祓うというところは見れていない。
「どんな奴?」
「老舗の大店の倉庫になにか出るらしい。詳しくはまだわからない」
「へぇ」
なにか出るって幽霊ってことはないんだろうか? 妖が存在したのだから幽霊というのもいてもおかしくない、と思うようになった。
あれ、でもそうしたら母は今どこかにいるんだろうか……。
「また保健室か?」
「ん? ああ」
丙はあまりいい顔をしない。
「あいつにあまり懐かない方がいい」
懐いたつもりはないんだが。
「あいつがどうしてネクロマンサーになったか知ってるか?」
「いや?」
「恋人が死んで、それをどうしても蘇らせたかったらしい」
「……そうなんだ」
蘇らせるって、どうやってだろう? そんな方法を知りもしない自分だったら、どんなに愛した者がいたとしても、蘇らせようとは思いつかないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!