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まぁ、そうだよな。
「オレは行ける」
「セツなら兎も角、人間なんて美味しい餌としか思ってない連中だってうじゃうじゃいるんだからダメよ」
丙が微かにムッとしながら返したが、閏は即座に却下する。
丙が群れをなす妖に襲われるゲームのバイオハザードのような光景を想像して、自分も首を振る。心なしか彼の肩が下がったのは気のせいではないだろう。
ノーモンをチラッとみると、すぐさま首をぶんぶんと振る。
「ごめん、僕も無理だよ」
「だよな」
ユリウスとグレゴリオの時に負傷した怪我がまだ完治していない。
妖界なんて針の筵のようなものだろう。でもさ、虎穴に入らずんば虎子を得ず、なんだよ。オレはひとりででも行ってやるよ。
「妖の世界には、三大悪妖怪ってのがあるそうだ」
「え?」
先生が三本の指を立てている。
「一人は鬼で、お前の父親である酒呑童子のことだ。討伐されて人間界にはいられないが、あちらの世界では今も好き放題やってるようだな」
そう言って薬指を折る。
「次に大天狗があげられるが、所謂怨霊ってやつでな。こいつは神として崇められてるような奴でもある。近づかないに越したことはない」
また指を一本折る。
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