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「最後に、絶世の美女と名高い九尾の狐、玉藻前は殺生石にされたが、そいつの子孫がこっちの世界にいるらしい。春海が仲間になってくれないかなって呟いてたこともあるから、仲間になる可能性はなくはない奴なんだと思う」
「そいつは純粋な妖なのか?」
「そうだと聞いている」
「じゃあ、そいつの力を借りれば妖界に行っても安心ってこと?」
「まぁ蜂の巣を突いた状態にはならないかもな」
半鬼だけじゃ心許ないが、三大悪妖怪の純粋なる子孫がそこに付いていれば、闇雲に群がって来ないって算段か。
閏をチラリと伺い見ると、腹立たしそうに長いしっぽでソファをパシパシと叩く。
「狐の力を借りるなんてやめておいた方がいいわ。あいつら腹でなに考えてるかわかんないんだから」
「でも力は認めるんだな」
「……」
ノーモンと顔を見合わせてしまう。
「そうはいっても、その子孫の性格も力も未知数だ。迂闊には」
「何処なんだ、そいつのいるところは」
先生の言葉を遮ってでも聞く必要がある。
「躊躇いないなー。確か、殺生石は高尚によって砕かれて各地に飛び散ったという説があって、そのうちのひと欠片に寄り添っているらしいんだが……」
「玉藻稲荷神社」
丙が呟く。
「え? 知ってるのか?」
「オレは逢ったことはないが、話に聞いたことはある。強い狐が神社に居着いていると」
強いんだ。
「ちなみにそれってどこ?」
「栃木県大田原市だ」
「先生、車出せる?」
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