七.草木萠動

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 儀鳳様というのは玉藻前の子孫のことだろうか。彼らはその配下のようだ。 「その儀鳳さんに用があるんだ」 『何用だ?』 「妖界に行くのに力を貸してほしい」 『儀鳳様に力を貸せだと? 何様のつもりだ』  何様って言われてもな……。人間様だとでも? 「酒呑童子の子供が来たと言え」 「え?」  先生がボソリと耳打ちする。  ああ、そうか。酒呑童子という奴が親なんだっけ。 「オレは酒呑童子の息子だ。玉藻前の子孫に逢わせてくれ」 『しゅ、酒呑童子だと?』  おっと、いい反応かな? 『酒呑童子といえば史上最強の鬼!』  緑色の光が揺らぐ。それは動揺が現れているのだろうか。 『な、ならぬ!』 『ならぬならぬ!』  あれ?  緑色の光が炎のような形を象る。 「交渉不成立?」  なにか仕掛けてくる、と身構えようとしたのだが、少し様子が違うようだ。  ぐらりと炎が揺らぎ勢いがどんどん衰えてくる。 『!?』 『な、なにをした』 「え?」  なにやらお狐たちは焦っている。 「心配するな」  丙が言う。 「こういう一本道の場所は退路を断たれてはマズいからな」  来た道に赤い糸が張り巡らされている。  なにも喋らない癖になんかぶつぶつ言ってると思ったら、丙はこれを仕掛けていたのか!     
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