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一気に闇の中に取り込まれる。
いや、気づくと自分だけが明るい。ウミホタルのように発光しているのだろうか。
ふっと自分以外の気配がして、顔を上げると、誰かがそこにいる。その人も発光しているみたいだ。
白の長髪でスラリと背が高い。美しさと怪しさが入混じった雰囲気を出している。
妖麗な、とういう言葉をはじめて人に当て嵌めた。
いや、人ではないのか……。
狐の妖と聞いて女性を思い浮かべていたが、男性だったようだ。
「儀鳳、さん……?」
切れ長の瞳が細められフッと笑われる。
「如何にも?」
印象より少し低い声だが、耳に心地好い。
取り敢えず無事に会えたということか。第一関門突破だ。
第二関門は交渉。
「あの、」
「鬼が来たと聞いたが、あんたダンピールじゃないか?」
「え? ダンピール?」
「ヒトと鬼の混血のことだ。不死である鬼を殺す力を持つという」
「え、そうなの?」
そんなの初耳だ。
「お前が鬼どもに命を狙われる所以はそこにある」
なるほど、ふたつの世界を揺るがすからだけでなく、自分たちの立場を危うく出来る存在ってことで危険視されているわけか。それだったら腑に落ちる。
「それでも妖界に行きたいのか?」
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