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「お前の心配など取るに足らぬ」
そうおかしそうに笑われる。まるで心でも読まれてるかのようだ。
鏡ケ池を覗き込むと自分の姿が映り込む。随分ビビった顔をしているな。
頭から行くか足から行くかと迷ってると、ドンと背中を押される。
「うわ!」
当然態勢を崩して覗き込んでいた池に落ちた。
一気に全身まで池の中だ。
冷たい!
いや、熱い!?
「まぁ、天狗の旦那があんたを狙ってるからせいぜい気を付けることだ」
池の外側から声が響く。オレを池に落とした儀鳳だろう。
天狗って三大悪妖怪の大天狗のことか?
それって、先生が怨霊だとか近づかないに越したことはないとか言ったやつのことだよな……。別れ際に怖いこと言うなよ。
落ちてるんだか浮いてるんだかわからない。
暗いところにいたせいか、ここは目が眩むくらい光に満ちている。
時間の感覚を失いそうだ。
先生と丙と閏は大丈夫だろうか。
暖かな日差しのあたる花畑の中にある大きな岩の上。この過去の情景は自分の中でいくらか美化されたものかもしれない。
「出来れば、あの人のこともみていてくれないかな?」
ひとつの約束を交わした後、ついでにとでも言うかのように彼女は言った。
「なんでオレが」
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