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「あの人は弱いから……」
「弱い? オレあいつに殺されかけたことあるんだけど」
「ふふ、そういう強弱じゃなくてさ。とっても弱いやつなのよ、あの人は」
この時は彼女の言っていることが理解出来なかった。妖界では精神的な強弱なんて知り得なかったから。
「きっと私がついてないと生きてけないような、ね」
今になってわかる。暦の言ってることは正しかったよ。あいつは本当に弱かった。
暦の死を拒み、それ以降のすべて理解することを放棄した。自分で考えようとせず、周囲の意見に流されて、今に至ってる。やってることはただの駄々っ子とおんなじさ。
暦のことを本当に愛していたなら、暦が愛したかったその子どもに手を掛けようなどと思わない。
本当に大事だったなら、自分の立場をちゃんと考えるべきだったんだ。
人間と鬼、自分たちが異なる生き物だということに目を逸らしてはいけなかった。
セツは強くなってきている。子供の頃と比べればそれはもう格段に強くなった。これからも彼はいろんな縁を経て、さらに強さを増すことだろう。
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