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八.菜虫化蝶
浮いてるのか堕ちてるのかわからない空間から、突如放り出された。
「うわぁ!」
堪らず受け身も取れずに硬い地面に尻餅ついた。
痛たたたーと摩る。
「セツ! なんでここに」
その声に振り向くと、目を丸くしている春海がいた。少し笑いを堪えたような、損なったような顔をしているのは気のせいだろうか。
どうやら春海の元に直接着いたようだ。
だけど彼は怪我をしているみたいでボロボロだ。こちらに駆け寄りたいようだが、右足が思うように動かなそうだ。
きょろきょろと辺りを見渡す。
「ここどこ?」
「レキがいるとこだよ」
途中で他の妖に絡まれることも、迷子になることも、心配する必要がなかったわけだ。
「……狐につままれたわけか」
ラスボスの元に直接ワープするなんて、強くてニューゲームじゃないんだから勘弁願いたい。
それならそうと言ってくれた方がまだマシだった。性格悪いな、あいつ。
「狐? まさか儀鳳と遭ったのか? 腰まである黒の長髪じゃなかったか?」
「いや? 髪は長かったけど白髪だったぞ」
「セツ、運がいいな。奴は多重人格者だ。オレが会った時は鬼のようだったぞ。殺されかけたし」
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