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「ほ、ほら、色々ほかにも準備ってもんがあるだろ? 消毒液とか……」
佐久間はリュックから消毒液とティッシュを取り出した。用意が良すぎて気持ち悪い。
「ま、マジか……」
「マジマジ」
学生ラウンジでテーブルを挟んで向かいに座っていた佐久間は、ピアッサーを手に俺の右側の椅子に座った。
「うう……」
ティッシュに消毒液を含ませて俺の耳朶を拭く。
そして俺の耳朶はピアッサーの溝に嵌る。
「いいか、動くなよ」
「ひぇ……」
怖くて目を思いっきり瞑る。
バチンとバネが弾ける音と同時に右耳に痛みが走る。
「痛っ……!」
「はい、終わりー」
「お前な、予告くらいしてくれ……」
強い痛みは一瞬だった。思ってたよりは痛くはなかったが、あとからジワジワと痛みが湧いてくる。
「う~……、痛いぞこれ……」
鈍痛がする右耳に手を当てると、そこには確かに耳朶を貫通したピアスがあった。
佐久間がもう一度消毒してくれた。
「1ヶ月これ外しちゃダメだからね」
また後で、と残してどこかへ行ってしまった。
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