お仕置きの時間

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「何でって、ホントに分かんないの?」 「痛てぇって!」  グイッと右耳を引っ張られる。直接耳朶には触れられてないが、痛いものは痛い。 「俺の大事な恋人が、俺の知らないところで、俺の知らないやつにこんなもん付けられて、怒らないはずがないだろ?」  顔は笑っているが、目が、笑っていない。 (ヤバい、マジギレだ……)  昔、一度だけコイツを本気で怒らせたことがある。和馬が本当に大切にしていたグラスを割ってしまったのだが、その時は割れた破片片手に迫ってきて、最終的には俺の頭スレスレのところを掠めて壁に突き刺さった。  ……コイツを怒らせると、何をしでかすか俺ですら分からない。 「はあ、何でよりによってピアスかなぁ。消えないキズ、残されたようなものだよ?」 「ご、ごめん……」  和馬は俺の耳を引っ張っていた手を緩め、そっと撫でる。 「処女耳奪われちゃったからなぁ。……こっちは、盗られる前に俺が貰っちゃわないとね」  そう言うと、穿いていたジーンズを和馬に剥ぎ取られた。あまりの手際の良さとキレた和馬の怖さから、されるがままになっていた。「俺が下なのか?」とか「マジでする気なのか?」とか、聞くまでもない。  だって、コイツ目が本気なんだもん……!  和馬がベッドから降り、鞄を漁り始める。俺もつられて起き上がる。和馬が取り出したのはローションとゴムの箱。それから、輪っか状の紐がついたピンク色の楕円形の物体。それらを俺の横に投げ寄越した。 「とりあえずゴム付けて」 「は、はい……」  仁王立ちでこちらを見下ろす和馬に思わず敬語になってしまった。言われた通りコンドームを付ける。
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