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ある日の昼下がり、ぼうやは庭にビー玉を並べて遊んでいました。
すると、頭の上の方からバサバサッと音がしてカラスがやってきました。
カラスはよちよちとぼうやの目の前まで歩いてきたかと思うと、何食わぬ顔でビー玉をくわえて飛び去ってしまいました。
「待って!ぼくのビー玉を返して!」
ぼうやは慌てて追いかけましたが、カラスはどんどん遠ざかっていきます。
「待って!待ってよ!」
しばらく走っているとカラスは塀に隠れて見えなくなりました。でもすぐに「フギャー!」というなにかの鳴き声と争う物音がして、カラスが塀の陰から出てきました。
カラスは下の方に向かって「カァ」と一声鳴き、どこかに行ってしまいました。
ぼうやはカラスを見失ってしょんぼりしましたが、何があったのか気になって塀の下まで行ってみました。
そこでは一匹の小さな黒猫がゴロゴロと転がりまわっていました。
誰かの声がします。
「あんちくしょー!おいらの缶詰をひっくり返しやがって!今度来たら食ってやるからなー!」
ぼうやは周囲を見渡しましたが、自分と黒猫の他には誰もいません。
「誰かいるの?」
そうぼうやが言うと黒猫がびっくりして跳び上がり、ぼうやとバッチリ目が合いました。
ぼうやは「もしかして君がしゃべっていたの?」と聞こうとしましたが、「もしかして」までしか言えませんでした。黒猫が小さい前足でぼうやのほっぺをムギュッと挟んだからです。
ぼうやの唇がぎゅっととんがりました。
黒猫がまん丸の目を細めて言います。
「ぼうや、見ちまったのかい?おいらの声を聞いちまったのかい?」
ぼうやがこくこく首を縦に振ると、黒猫が顔を近づけて来ました。
「ぼうや、誰にも言わないと約束できるかい?」
ぼうやはもう一度こくこくと頷きました。
それでようやく黒猫が前足を離してくれました。
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