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「ぼうや、ぼうや、起きな」
シロヒゲのひそひそ声でぼうやは目を覚ましました。空はうっすらオレンジ色に染まっていました。
「ほら見なよ。あいつが来たぞ」
見るとカラスが一羽、庭に降り立ったところでした。
カラスは一度だけきょろきょろと首を降ると庭の中心に向かってまっすぐ歩いていき、真っ黒なくちばしで岩塩をつまみました。
「やった!」
ぼうやとシロヒゲが大きな声で叫んでタオルケットの下から飛び出しました。
カラスはびっくりして、「カァ」と鳴いた拍子に岩塩がころころと口の中に入っていきました。
カラスは飛び上がりました。
「カァライ! ショッカァラーーイ!」
それを見てぼうやとシロヒゲはゲラゲラ笑いました。
シロヒゲが大声で言います。
「ざまあ見やがれ!おいらたちの縄張りに二度と近づくんじゃねーや!」
カラスはペッペッと唾を吐きながらフラフラ飛んで行きました。
「うまくいったね」
「ああ。気持ちがいいや。ぼうや、ありがとな」
シロヒゲが小さな前足を持ち上げたので、ぼうやはぎゅっと握手をしました。
「いいかい、おいらのことは内緒だぜ」
「わかってるよ」
「ぼうやのこと気に入ったよ。またつるもうぜ。あばよ!」
ぼうやが声をかける間も無くシロヒゲが駆け出しました。シロヒゲはぼうやの庭を出て、道路をまっすぐ走って行きます。
ぼうやはシロヒゲの背中に向かって手を振りました。
「またね!」
ぼうやはその晩、洋服とタオルケットを泥だらけにしたことをママにこっぴどく叱られてしまいました。ぼうやはとってもいい子でしたが今日はもう十分怒られたと思ったので、岩塩を庭に撒いたことは黙っていました。
次の日もその次の日も、ぼうやは庭でいつものように遊びましたが、いたずらカラスが来ることはありませんでした。
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