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ある日の夜、ぼうやの住む町に台風がやってきました。
窓の隙間からごうごう、びゅうびゅうと低い風の音が聞こえてきます。恐る恐るカーテンを開けると外は真っ暗で、絶え間なく窓ガラスにぶつかってくる雨粒以外にはっきり見えるものはありませんでした。
突然外がピカッと光ったかと思うと、ほとんど同時にドーンと大きな音がしました。
びっくりしたぼうやは一目散にベッドに飛び込み、布団にくるまって耳をすましているうちに眠ってしまいました。
翌朝はとてもいいお天気でした。ママが鼻歌を歌いながら洗濯物を干しています。
ぼうやはパパに昨夜の眩しい光のことを聞いてみました。
「それは雷だよ。家の近くに落ちたみたいだね。台風は遠くに行ってしまったから、もう心配いらないよ」
「だれかの落としものなの?ちゃんと見つけられたかな?」
パパは少し困った顔をしました。
「ああ、きっともう誰か拾ったさ」
ぼうやは朝ごはんを食べ終わると、お腹の部分に大きなポケットのついたオーバーオールに着替えて家を出ました。
「もしまだ落っこちたままだったら、届けてあげなくちゃ」
ぼうやは道路をうろうろと歩いていました。何か光るものが落ちていないか足元を気にしながら(昨夜のようにピカピカ光っているはずだと思ったのです)
ところが道路は「何か落ちていないか?」どころか、落し物だらけでした。葉っぱ、木の枝、ぐしゃぐしゃになった雑誌、空き缶……どれも湿っています。まるで町中のごみを集めてかき混ぜたかのようです。
それらを見ているうちに、ぼうやは不安になってきました。
カミナリがポケットに入らないほど大きかったらどうしようかしら。びちょびちょになっていたらどうしようかしら。ハンカチを持って来ればよかったな。
公園のそばにさしかかった時、どこからか物音が聞こえてきました。
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