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「ぼうや!大丈夫か?」
ぼうやは目の前がチカチカして、口の中がピリピリしましたが痛いところはありませんでした。フラフラしているとカミナリが手から転がり落ちて、スーッと逃げて行きました。
「シロヒゲ、つかまえて!」
「よしきた!」
ジグザグ滑るように離れて行くカミナリを、シロヒゲが追いかけます。ぼうやも走り出しました。
カミナリはなかなか捕まらないようで、シロヒゲがどんどん離れて行きます。ぼうやはだんだん体が重くなっていくように感じました。それになぜだか動くたびに後ろからコンコンと音がします。
立ち止まって振り返ると、ぼうやはびっくりしました。背中にびっしりと空き缶がくっついていたからです。
「あれれ?いつの間にくっついたんだろう」
ぼうやは不思議に思いながらも空き缶を掴んで投げ捨てようとしました。けれども、空き缶は掴んだ手から離れません。
「ぼく、磁石みたいになっちゃった!」
あたふたしていると、頭上から「カァー」と声がしました。見ると、キラキラするものが大好きないたずらカラスが塀の上からぼうやを見下ろしています。
カラスはあっという間に近づいて来て、ぼうやの背中の空き缶をつつき始めました。
「やめて!やめてー!」
ぼうやは逃げ惑いますが、行く先々で空き缶は増えるばかりだし、カラスも離れてくれません。
ぼうやが泣きそうになったその時、真っ黒な猫がどこからか飛んで来て、前足でぴしゃりとカラスを打ちました。
「ぼうやから離れろ!食っちまうぞ!」
カラスは忌々しそうにシロヒゲを睨み付けてから、ゆっくり飛び去って行きました。
「シロヒゲ、助けてくれてありがとう」
「どうってことないさ。でもごめんよ、カミナリは見失っちまった」
ぼうやはしょんぼりしているシロヒゲを撫でてあげました。
「落とした人のところに帰ったのかな?もうちょっとだけいっしょに探してくれる?」
シロヒゲは頷き、ぼうやのポケットに潜り込みました。
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