第1章

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 真夜中、暑くて目が覚めた。隣を見る。妻のシルエットがあった。彼女はこちらに背を向け、すやすやと寝息を立てているようだ。寒いからと言って冷房を切らされたが、こっちとしてはとても寝られたものじゃない。  暗がりの中そっとリモコンを手に取りボタンを押した。ピッと電子音が鳴るが、妻が目を覚ました様子はない。  しばらく待つと心地よい冷風が吹いてきた。これで安眠できるぞと思い目を閉じたが、中途半端な時間に目覚めたせいかなかなか寝付けない。  妻の方を見る。横になったその背中が暗闇に浮かんで見える。腰から下に向けての緩やかな曲線。  そう言えば、最近ご無沙汰だった。そう思った途端、なんだかムラムラしてきた。  そろそろと腰に手を伸ばした。反応はない。調子に乗って妻ににじり寄り、背後から胸へと手を這わす。ふくらみの頂点に届くかと思った瞬間、乱暴にその手を払いのけられた。彼女は無言のまま、こちらを振り向きもしない。  眠いのか。しょうがないと諦め、寝返りを打った俺は思わず飛び起きた。そちらには寝室のドアがあった。そこに人が立っていたからだ。 「あら、起こしちゃった」  それは妻の声だった。 「冷えたのかしら。お腹が痛くなっちゃって。トイレに行ってたのよ」  焦って振り返る。そこには誰もいない。  妻がベッドを回り込み、定位置に寝転んだ。さっきまで、何かがいた場所に。 「どうしたの?」  不思議そうな顔で妻が訊く。だが答えることはできない。俺にもわからないからだ。  一体俺は、何を抱こうとしていたのか……。
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