まばたき

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 私は立ち上がり、手探りで窓の方へ向かった。だが外を見ようとしても、最初から窓の外には月明かり以外の光はないことを思い出した。田舎の、それも山の方を向いた窓からは何も見えない。  際限なく不安が増していく。自分を落ち着かせるために、頭を働かせる。  おそらく月は雲に隠れたのだ……そう思っても、今日も明日も天気は快晴で、隠れるような雲は出ていないことを知っている。  山にでも隠れたのか……いや、山はそんなに高くなかった。それに隠れていて月がちょうど見えないのだとしても、月が照らしている場所は見えるはずだ。  その他いくつか考えるも、何一つとしてつじつまが合わなかった。ならば、それがいくら荒唐無稽であろうとも結論は一つしか無い。  月が、月明かりが、消えたのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加