まばたき

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 そう考えた時、私の不安は途端に恐怖に変わった。私は息を荒げて窓を開けようとした。だが開かない。鍵を閉めていたことを思い出し、外す。だがそれでも開かない。  冷や汗がダラダラと出てきた。何も見えない部屋の中で足をもつれさせながらも入り口へと向かう。廊下に出ようと力任せにドアノブを動かすも、やはり開かない。私はもはや余裕を保つこともできなくなり、ドアを叩いた。握りこぶしで、ドアを叩き壊すつもりで叩いた。壊れないので、椅子を手探りで持ってきて全力でドアに叩きつける。何度も、何度も。それでもドアは壊れない。しかしドアに傷は付いたはずだと、それを確認しようとして、手で探る。傷一つ付いていなかった。  そんなはずはないと椅子を振りかぶってむちゃくちゃに暴れまわる。椅子を振り回していたからか、私はバランスを崩して倒れ込んだ。その時、頭のぶつかるべき床になにか予想と違う何かがぶつかる。ヒッ、と声を引きつらせながらそれが何かを確認するために手で触ってみると、私のカバンだった。そこで私は思い出す。明かりが欲しいならスマホをつければいい。ライトや懐中電灯は持っていないが、スマホで十分代わりになるだろうと考え、カバンの中に手を入れて探す。触り慣れたスマホの硬い感触が指先に当たり、カバンから取り出した。だが電源を押しても反応しない。  私はこの異常事態に、もはや他に何をすればいいのかも分からず、スマホを握りしめながら床に倒れ伏していた。起き上がる気力も湧かず、そのままでいると、恐怖ですっかり忘れ去っていた睡魔が襲ってきた。  そうだ、寝てしまえば何もかも解決しているんじゃないか……これは悪い夢で、起きたときには何事もなかったかのようにもとに戻っているんじゃないか……。  私は逃げるように目を閉じた。
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