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第2章・自然
僕は街の中心部から離れた。
歩けば歩くほど、更に植物の勢いが増していた。
「・・・」
景色を覆う見慣れた草たちはやたらと巨大で、葉の肉厚を誇るように天に伸ばしていた。
もう一部の町は、完全に森になっていた。生い茂る木々と、草、苔、道すらも完全に消えていた。
僕は、はたと歩く足を止めた。
「呼吸が楽だ。というかとても気持ち良い」
あまりの街の変化に目を奪われ気づかなかったが、空気が透き通るようにきれいだった。呼吸をしているだけでとても気持ちが良い。吸っている僕の体が、胸の奥底からそれを欲しているのが分かった。
僕は辺りを見回した。何か見えている景色さえも何か澄んでいるように見えた。透明の、更に透明の向こう側が見ているような気がした。
「本当に空気がきれいだ」
それは全く味わったことのない生まれて初めての空気感だった。空気がマイルドで、キレがあった。僕は何度も何度も、思いっきり空気を胸の奥へ吸い込んだ。癖も濁りもなく、それは完全な純粋だった。
空を見上げた。その青は、やはり限りなくどこまでもどこまでも奥深く透明に澄んでいた。
道なき道をかき分け、森を抜けた。
「川だ」
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