第2章・自然

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 澄んだ水が体の隅々まで浸潤していく。汚れた体が、美しく細胞の一つ一つから生まれ変わっていくような感覚が全身を流れていった。 「あっ」  その時初めて自分がメガネをかけていないことに気付いた。 「見えている」  メガネをかけていないにも拘らず、はっきりと周囲の景色が見えていた。 「どうなっているんだ!」  メガネ無しでは生活すらもままならなかったのに・・。しかし、何度も瞬きをし、辺りを見回すが、確かにメガネ無しではっきりと僕の目は見えていた。 「・・・」  僕はそのまま川沿いを歩いて行った。踏みしめるやわらかい草の感触、頬を伝う心地良い風の流れ、花や植物の瑞々しい香り、全てが新鮮で心地良かった。 「あっ」  突然目の前が下にずり落ち、暗くなった。  足元が予期せぬ段差になっていて、そこに落ちたらしい。上を見上げると、太陽の明かりが小さく見える。水路の跡か何かなのか、それはとても深かった。 「うっ」  落ちた時、右腕をしたたか打ったらしい。激痛が一瞬走りジンジンと熱く嫌な感じの熱と痺れが全身を巡った。  嫌な予感がして腕を見ると、そこはぱっくりと大きく割れていた。そしてそこから容赦なく真っ赤な少し粘り気のある血がドクドクとものすごい勢いで流れ出していた。  僕はこれからを考える間も無く、気を失っていった・・・。
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