小鬼、大鬼の住む処

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小鬼、大鬼の住む処

O府とN県の間に広がるI山付近は、歴史も古いこともあり、様々な怪異の噂が多いところです。 昭和40年代頃は、まだ、田んぼがどこまでも広がり、夜になるとウシガエルがうるさいほど鳴き、うちの家のすぐ横の川もコンクリートで整備されることなく、I山からの岩肌をぬって流れていました。 家の庭には蛇の抜け殻がよく落ちていましたし、ヤモリやトカゲもウヨウヨはい回り、汲み取り便所には大きな銀蠅やカマドウマが出るのが日常でした。歴史の古い神社、仏閣も多く、そんな土地が持つ独特の力の故なのか、いまでも、占い師や自称霊能力者などがたくさん住んでいる地域です。 このI山の麓に家に住んでいたまだ子どもの時分、姉も私も、鬼を見たことがあります。 姉は毎夜、一階の和室で、両親と川の字になって寝ていました。 台所と部屋とを仕切る戸襖には、明り取りのため上半分、障子が組み込んでありました。就寝時でも、台所の豆電球の明かりが、暗い和室に漏れてきていました。 姉は、両親と川の字になって和室で寝ていました。ある夜中、姉はふっと目を覚まして、障子の方を見やりました。     
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