第一章 就職活動に敗れたわたしは……

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「なあに、道男叔父さん?」とわたしはドアの前で恐る恐る尋ねる。 「るり子ちゃん入ってきて」と返事が返ってくるけれどこのドアを開けたくない。わたしはしばらくの間ドアをじーっと眺めた。 「お~い、るり子ちゃん。どうぞ」 仕方がない、わたしはえいっと勇気を出してドアを開けた。 ああやっぱり変わっていないと思った……。 そうなのだ。 道男叔父さんの部屋の中は壁一面に女性アイドルのポスターがペタペタと貼られており、棚の中には大量のフィギュアが飾られているのだった。 そして極めつけには、恐竜の玩具が床にところ狭しと置かれている。 わたしはめまいを起こしそうになる。 「るり子ちゃん、ほら見てごらん」 道男叔父さんはよくわからない恐竜をわたしに見せる。 「それはなんでしょうか?」 「よく聞いてくれたね。これはだね、スピノサウルスという恐竜なんだよ」 わあ、始まってしまったよ。聞きたくない。
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