真夜中に出会ったアイツ

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昔から、月は人間の精神状態に影響を与えると信じられていたらしい。 特に満月の夜には… 今日も就活のストレスで全く眠れないまま、真夜中になってしまった。 3月から始めた就活も気づけば夏。 おまけに連日の猛暑で身も心もボロボロだ。 まったく就活生もクールビズOKにして欲しい。 ふと空を見上げると、月があまりにきれいだったので思わず外へ出た。 2、3日前は満月だったなーと考えながら軽いジョギングを始めると、 小学生の時、良く遊んでいた公園にたどり着いた。 自販機でスポーツドリンクを買い、ベンチにどかっと腰を下ろした。 今までいったい何社受けただろう。 今回やっと最終まで行き、今度こそはと臨んだ社長面接は、言いたい事の半分も言えず、撃沈だった。 結果は予想通りで不合格のお祈りメールを 即座に削除した。 でも、メールが来るのはまだ良い方で期限も言われずひたすら結果を待ち、恐る恐る問い合わせると不合格の場合もある。 こういう企業は、負け惜しみだが合格しなくて良かったと思う。 就職率も上がり、就活なんてちょろいとたかをくくっていた自分が甘かった。 また1からやり直しかと思うと 途方に暮れ、頭を抱えていると、 タメ位の男子が近づいて来た。 「どこか具合でも悪いの?」 「いや。就活に絶望してるんだ。」 「君も?」 「えっ?おまえもな の?」 「僕は就活2年目だから、僕の方が重症だよ」 彼は青白い顔で言い放った。 それからベンチで俺達は一晩中語り合った。 最後に、絶対に今まで受けた会社を落ちて良かったと思える会社に入ろうと誓い合った。 連絡先を交換し、2人共内定が出たら祝杯をあげる約束をして別れた。 就活仲間が出来、また頑張る意欲がわいてきた。 空が白々明ける頃、帰宅しテレビをつけると、 さっきまで会っていたアイツの写真がアップになっていた。 俺は茫然と立ち尽くした。 ちょうど満月の夜、就活に悩んだ末、あの公園のベンチで睡眠薬を飲んで自殺したそうだ。
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