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警備会社に問い合わせたが異常なし。
「仮に誰かが割ったとしても、どうやったらあんな風に粉々に割ることが出来るんだろうかって思いましたよ」
Fさんが気になっていたことは他にもあった。
「もしこの世の者ではない者の仕業なら、いつ割れたかが問題なんです」
Fさんが小さい頃、祖母から聞いた話によると、割れたのが夜なら誰かの身代わりになったのだから問題ない、でも午前中なら悪いことが起きる兆し、とのこと。
「私はハラハラしながら、子供たちが戻って来るのを待っていました。そして4日後に全員が無事に戻って来てホッとしたのですが・・・」
翌日が休みになっていた生徒たち。
ノンビリ旅の疲れを癒しているとFさんは思っていたら、職員室に電話がどんどん掛かり始めた。
多数の子供たちがおう吐や下痢の症状を訴えて、病院に運ばれているというのだ。
後で分かったことだが、最後の旅館で食べた朝食が原因で、かなり重い集団食中毒が発生したのだ。
「ああ、鏡は朝に割れたんだな、と思いましたよ。誰にも言っていませんけどね」
そう言ってFさんはため息をついていた。 (了)
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