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②【4組】
「その中学校はいくつかの学校が統廃合して造られたんですがね。生徒さんたちの制服がまだ間に合わなくて、みんな元いた中学校の制服を着ていたから、どこの学校から来たか、すぐわかったんです」
その中で、M中学校は男子は詰襟、女子は紺色のセーラー服だった。
Fさんが校内で作業をしていると、自然と生徒たちの会話が耳に入って来る。
「前の学校では何組だったの?」
「2年3組よ、あなたは?」
「私は2年8組」
そんな他愛もない会話が毎日のように聞こえていた。
「でも、なんか変だなと思ったんです。M中学校出身の生徒さんで、『4組』という子がいないんですよ。全学年でね」
そこでFさんはM中出身の女子生徒に訊いてみた。
「うちの学校は、4組がなかったんですよ。1年も2年も3年も」と女子生徒が言う。
「じゃあ、教室は3組の隣は5組?」
「いいえ、3組の隣は教材置場で、その隣が階段、その隣から5組、6組って続くの」
「どの学年も、3組の隣は教材置場になっていたの?」
「うん。私たちが入学した時からそうなっていたんだ」
「なんでなの? 理由を知ってる?」
「先生にきいたけど、分からないって。先生も古株の先生にきいたらしいんだけど、『験担ぎのようなもんだ』って」
確かに「4」は「死」を連想するから、使用を避けられることはあるが、だからと言って、学校で4組を使わないなんて聞いたことがない。
Fさんは気になって、M中学から来た先生の何人かに訊いてみたが、誰も理由を知らなかった。
「ただ、ある年配の先生が教えてくれたんですが、『M中から来た子は、どの学年でも4組に入れないようにって指示があったらしいよ』と。実際、そうなっていたんですよ。誰の指示なのか、もし4組に入っていたら、どんなことが起きるのか、結局、分からずじまいでした」
Fさんは、その学校からはたった1年で異動になった。
「M中から来た先生たちに、根掘り葉掘り聞いたのがよくなかったんですかね」
そう言って、Fさんは苦笑いをしていた。
(了)
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