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3
三日目の夜。
私は台所で煮物を作っていた。
ガスコンロの奥の方にある小窓を開ける。生ぬるい空気が入ってきた。煮物の火を弱火にしたところで、インターホンが鳴った。
「クール便です」
実家の母が送ってくれた漬け物や果物だった。
会釈をしてドアを閉めようとする私に、宅配便の人が言った。
「このアパート、新築されたんですね。去年まで年季が入ってたんだけど。綺麗になったなあ」
「そうだったんですか…」
笑顔で去る配達人の背を見ながら、新築のアパートだとは聞いていなかったんだけどな、と思った
。
ドアを閉めた直後、またあの音が鳴った。
「だだんっ!だだんっ!」
「……?」
きのうよりも強めの音がドアから聞こえる。配達人はもう向こうに行ったはずだ。私は覗き穴から外の様子を伺った。
何も見えない。見えるのは暗闇だけだ。
私は首をかしげ、その夜は何事もなく眠りについた。
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