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五日目。 初日に感じたのと同じような、それよりも強い冷気が部屋に充満している。 このアパートは何かがおかしい。住人の姿を見ないのだ。私以外に。真夏の夜だというのに、エアコンをつけずにこれほど冷えるはずがない。 私は急に不安になって、実家の母に電話をかけようとした。 ふと、点けてもいないテレビの画面に、少女のような姿が写っている。私は咄嗟に後ろを振り返った。誰も居ない。 「だだだだだん!だだだだん!」 激しい音が玄関のほうから聞こえた。確かめなくてはいけない。深呼吸をしながら玄関へ向かう。 覗き穴に目をあてた。 明らかに充血した人間の眼球がそこにあった。 「いやあああっっ!!!」 飛び退いた私は、布団を頭から被りしばらく震えていた。音がしなくなってからも、ただひたすらに考えていた。 このアパートは何かがおかしい。
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