蜘蛛男

2/5
前へ
/5ページ
次へ
 私の友人はとある企業に勤めていました。 そこは大手であると同時にとんでもないブラック企業で、パワハラ・セクハラ・モラハラは勿論、残業続きで休日出勤もざらだったそうです。  その日も残業を終えた彼女が自宅についたのは日付を跨いだ午前0時過ぎ。 疲れてくたくたになっていた彼女はなんとか重い瞼をこじあけ、とりあえずシャワーだけでもと風呂場へと向かったそうです。  脱衣場で服を脱ぎ、シャワーの蛇口を回し熱い湯を浴びていると、ほんの少しでも疲れが癒えるのを感じると同時に何やら視線を感じたんだとか……。  しかし、彼女は上京し大学に入学した時からずっと一人暮らし。しかも部屋はアパートの二階。浴室に換気ようの格子がついた小さな窓はありましたが、入浴中は鍵をかけていました。  絡み付くような視線の気持ち悪さに窓を確認すると、やはり鍵はかかっていたらしく「気のせいか」と安堵のため息をついた瞬間……、彼女は見てしまったのです。  脱衣場から曇りガラスの扉にベッタリと張り付いて目を見開き彼女を見つめ、ニタァーっと笑う男を……。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加