蜘蛛男

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 驚いた彼女が「きゃー!!」と悲鳴をあげても男は身動き一つせず、ずっと口を大きく裂きニタァーっと笑い血走り見開いた目で彼女を見つめていたそうです。 ですが、彼女のただならぬ悲鳴を聞き付けた隣人達が真夜中でしたが、心配して駆け付けてくれたらしく、呼び鈴を鳴らし玄関の戸を叩いたりしている内に、男はツゥーっとまるで糸で引き上げられるかのように姿を消したそうです。  姿を消したといえど、玄関はしっかりと施錠していたはず?それなのに何故見知らぬ男がいるのか?と恐怖に怯えた彼女はなかなか浴室から出ることが出来なかったのです。  彼女がとてつもない恐怖心から足がすくみ、漸く浴室から出ることが出来たのは、「どうしたの?大丈夫?」と偶然同じアパートの下の階に住んでいた同僚の声が窓の外から聞こえたからで……。  藁にもすがる思いで浴室から出て、バスタオルを身体に巻き付けただけの姿に彼女の同僚を含む近隣住人はとても驚いたようでしたが、真っ青な顔で怯え同僚にしがみつく彼女を見て何も言えなかったそうです。  
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