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2.ジンミンゼミからシンミンゼミへ
大学に戻った学長は、部下を泣いたり笑ったりできなくなるまで働かせて『コウテイスッゴーイ』と鳴く遺伝子改変ジンミンゼミの開発を勧めた。蝉より先に部下の多くが音を上げ、「私が蝉の代わりに木に張りついて皇帝陛下を讃えます。それで許してください」と泣きながら訴える者も現れたが、もちろんそれで許されるはずも無い。
帝華大学ではそこかしこに「ポジティブデータを出せば自由になる」「緊張感を保って ACTH を分泌するようにしておけば風邪は引かない。風邪を引いたと言い訳して怠けた者にはカムサッカ体操をさせる」「夜中じゅう起きて蝉をチェックするのが当然で私はいつもそうしていますよ」「睡眠時間が足らぬ足らぬは根性が足らぬ」などの怖ろしい標語が貼られ、恐怖に駆られた研究員達は死んだ蝉のような目で日夜研究に勤しんだ。
研究員の三割が「ちくしょう、転職だ!」と叫んで帝華大学を去り、反体制派組織に身を投じたりもしたものの、皇帝を讃える遺伝子改変ジンミンゼミ――その名も〝シンミンゼミ〟はなんとか完成した。
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