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実際のところは、四分の一の確率で両方の遺伝子が改変型の孫蝉が生まれてくるのは、シンミンゼミの子同士で交配した場合のみである。野生型のジンミンゼミと交配した場合は半分が片方だけ改変型遺伝子の蝉、残り半分は両方が野生型遺伝子の蝉となる。したがって、『コウテイスッゴーイ』と鳴く蝉が生まれる確率は四分の一よりずっと低い。
しかしこのあたりを詳細に述べると宰相の怒りの火に油を注いでしまいそうだったので、学長はあえて黙っていた。
宰相はイライラと人差し指でデスクを叩いた。
「なんとかシンミンゼミの子供はちゃんと全部『コウテイスッゴーイ』と鳴くようにできないのか?」
ここでまた「難しいですな」と答えてしまうほど学長は愚か者ではなかった。七年前の失敗から学習し、科学者的慎重さをかなぐり捨ててこう断言した。
「できません」
だが、それで納得してくれるほど宰相も甘くはなかった。
「できないというのは嘘つきの言葉なんだ! 途中でやめるからできないんだよ!」
かくして帝華大学の研究員達は、再び感情の無いマシーンになるまで働かされることとなった。また、帝華大学には新たな標語として「できないというのは嘘つきの言葉。途中でやめるからできない」が追加された。このように理不尽は下へ下へと押しつけられていくものなのである。
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