狂った仕事

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 家の扉を開けて明かりをつけ、栄治は中に入っていく。決して広くはないが、かといって一人で生活するには狭くもない大きさだ。このマンションに引っ越してきて半年になる。  栄治はちゃぶ台の前に座り、クーラーのスイッチを入れる。  ふと、人の気配を感じた。振り返ると、父と母が立っている。 「また来たのかよ……」  栄治は舌打ちした。二人は、何がしたいのだろう。言いたいことがあるなら、言えばいいのに。  不快そうな表情を向ける栄治を、父と母は無言のまま見つめている。栄治はもう一度、聞こえるように大きく舌打ちした。立ち上がり、冷蔵庫の中を覗く。昨日スーパーで買いこんだ惣菜が、まだ残っていたはずだ……父と母が、無断で食べていない限りは。  冷蔵庫の中は、昨日のままだった。ビニールパックに入った唐揚げとポテトサラダが残っている。台所にあったカップラーメンにお湯を入れ、ちゃぶ台に並べた。  父と母は、相変わらず無言のままだ。うっとおしくて仕方ない。 「さっさと失せろ。でないと、もう一度殺すぞ」  さすがに耐えきれなくなり、栄治は二人を睨んだ。すると、父と母は何やら言い出した。口が動いているが、声は聞こえない。  栄治は、もう一度怒鳴りつけようとした。だが、面倒くさくなり止めた。その代わりにテレビをつけ、カップラーメンと惣菜の残りを食べ始める。  美味くも何ともない。ただ、食べなくてはならないという義務感から食べている。明日も、面倒な仕事があるのだ。食べなければ、仕事に差し支える。  そんな侘しい食事を、さらに不味くさせる両親の存在……父も母も、無言のまま後ろで突っ立っている。その顔には、表情らしきものは浮かんでいない。  不意に、誰かが隣に座った。見なくても、何者であるかは分かっている。 「姉ちゃん、また来たのかよ」  隣を見ようともせず、うんざりした口調で栄治は言った。隣に座りテレビを観ている女は、一応は姉なのだが……栄治より歳下に見える。  だが、それも仕方ない話だ。姉は十年前に死んでいるのだから。両親と一緒に、火事で焼け死んだことになっている。  ところが、真相は違う。火事になる前に、既に殺されていた――
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