気配

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『自分が座っている時に何もなくて良かった』と、安堵の息を吐いたとき、その人影がゆっくり、ゆっくりと体を動かすことなく頭だけでこちらを見た。  黒い頭部。そこに浮かぶように付いている二つの目が私を見た。  ジッ、と。睨むでもなく、ただただ、こちらをジッ、と。  時間にして数秒の出来事だっただろうか。人影は、ルームランプが消えるとともに姿を消した。  そして、タクシーは走り出した。あの人影を乗せて。
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