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ようやくスーツを見つけて、ほっとして眠り、出張の朝、そのスーツを着ようとして気付いたんだ。
ワイシャツに大きなしみがついてたんだ。
何だか分からないが、どす黒い、血のようなしみが。
ハンガーに掛かっていたときは気付かなくて。
他のワイシャツも、朝一番急いでる時だったから見つけられなくて。
結構目立つ位置だったから、上着でも隠せない。
俺は仕方なく、そのしみを抜こうと、必死に濡れタオルで叩いたりした。」
「汚れたまま、仕舞い込んじゃったんですかね、奥さん。」
「だから、あり得ないんだ。
あの妻が、ワイシャツを汚れたまま、クローゼットに仕舞いこむなんて。」
「そ、それもそうですね。奥様は、潔癖症ですもんね。」
「そうなんだ。一度来たワイシャツは、妻は必ずすぐにクリーニングに出すんだよ。
だから、俺のシャツは、いつもパリっと皺一つなかった。」
「ああ、それでだったんですね。」
「ところがあの日、急ぐ時に限って汚れたワイシャツしか見つからない。
ワイシャツなら、たくさんあるはずなのにどうしても見つからずに、
刻々と時間だけが過ぎていく。ようやく、自分なりに目立たない程度にシミを抜いて、
あわてて着込んで、自分の車に飛び乗った。」
「間に合ったんですか?」
「結局、間に合わなかった。」
「あちゃー。」
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