恐妻家

6/8
前へ
/8ページ
次へ
「間に合わなくて良かったんだ。」 「えっ?」 「お前、つい最近、地元で起こった玉突き事故、覚えてるか?」 「ああ、あの高速道路の!全国ネットでやってたんで、僕も見ましたよ。まさか!」 「そうだ、もう5分、いや、1分でも早くあそこを通っていれば、俺が巻き込まれていたんだよ。」 「そ、それって。もしかして、部長がシャツのシミ抜きに時間を取られてなかったら、 巻き込まれたかもしれなかったんですね?」 「そういうことになるな。」 「それってやっぱり奥様に守られてるんじゃないですか?だって、このタイミングでシャツが汚れてるだなんて。 死んだ奥様の意思を感じずにはいられないですよ。」 「俺も、そう思って、妻に感謝したんだ。俺を守ってくれて、ありがとうって、口をついて出たよ。」 「本当にこんなことって、あるんですねえ。」 「俺が、妻に感謝の気持ちを伝えたその直後に、盛大な舌打ちが耳元でしたんだ・・・。」 「えっ?嘘でしょう?空耳かなんかじゃないんですか?」 「妻の家計簿を見つけたんだ。そこには、クリーニングの領収書が挟まっていた。」 「は?」 「つまり、あのシャツは、クリーニングに出されていた。」 「じゃあ、何故汚れが?」     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加